漫画のBECKの話じゃないよ。

90年代前半のニューヨークで「アンチ・フォーク」というシーンがひっそり存在していました。
1996年にアルバム「オディレイ」を発表し、一躍当時のロック・シーンの最先端を行く存在として注目されたBECKもそのアンチ・フォークシーンで活躍していた一人です。
BECKが言うには「70年代のジェイムズ・テイラーキャット・スティーブンスみたいな小洒落たシンガーソングライターとか、ヒッピー風の女がやたらか細い声でユニコーンがどうたらと歌うバカげたものだとか、そういうものがフォークとされる見方を否定して、もっとルーツに立ち返ったものを歌おうとした」ということです。

彼らが手本にしたのはアメリカの古くからの伝承歌や、ウッディ・ガスリーのようなフォーク・シンガー、チャーリー・パットンやスキップ・ジェイムズといった30年代のブルーズマンなど。

アンチ・フォークを意識した彼らはライブハウスに集って、アコースティック・ギター、ハーモニカ、バンジョー、ペダルスティールなどを弾き、あるいはアカペラで行き当たりばったりなオリジナル・ソングやトラッドをかなりユニークな表現で歌っていました。

2000年代にはニュー・フォーク/フリーフォークと呼ばれるアーティストがぽつぽつ現れ、そのへんも伝統的なものを意識した音でしたね。

ディヴィット・グラブスのようなもともとはハードコアだった人でもアルバム「Thicket」でルーツ・ミュージックを取り入れた音を鳴らしてました。

アメリカ人はカントリー好き、とよく言いますが、それも国民性なんでしょうかね。
ジム・オルークが、日本に来て演歌歌うのはカルトな話だけど、何だか偉い気もします。

僕は個人的にデビュー以前のBECKが好きなのですが、色々聴いてみた結果、アンチ・フォーク的なサウンドの最重要作は、それより10年近く前に世に出たダニエル・ジョンストンのデビュー作でしょうね。

Continued Story / Hi How Are You (Dig)

Continued Story / Hi How Are You (Dig)

これに尽きる。フォーク精神とパンク精神に乗っ取ったぶっ壊れフォークです。



こちらは前述した初期BECKの曲。

こういうそのへんに転がってるような感じが良いと思います。