レイはヒーロー

最近某CD店で買い物したら、いつも通り無料の冊子がついてきたのですが。
なんかファッション&音楽みたいな冊子で、ブランドものの服を着て宣伝するミュージシャンやら、素人のモデルやら載ってる、そんな感じの内容です。

最近人気の若者バンドが表紙飾っていて、紹介されてたけど、煽り文句で「メジャーも見えてきた!」とか書いてヨイショされてて、なんだか浅はかというか薄っぺらにしか響きません。
そんなふうに書かれてバンド側はそれで満足なのだろうか、なんて思います。
今アイドルのように売り出される新人バンドは、ちょっとでも売れたら人気維持のために、なりふりかまわないような営業やらされてて気の毒です。
何枚も重ねられるベスト盤や、毎年のように作られる新しい卒業ソングやら夏ソングやらクリスマスソングなんて必要ないと思います。

・・・とメジャーな音楽にうとい僕のたわごとでした。
みんなが良いという音楽は、多分良いのだろうから、変に干渉してはいけないし。

Lola Vs Powerman..

Lola Vs Powerman..

レイ・デイヴィスのギョーカイ批判が込められたストーリーが語られる、通算9作目。
このアルバム制作の前に、レイによって綴られたキンクスのバイオグラフティ本を出版する予定だったけど、出来上がったそれはとんでもない暴露本だったので、没にされてしまったようです。
それでもレイは懲りずに、曲で借りを返すことにします。
このアルバムで語られるストーリーは、いいかげんに書類にサインして契約したばかりに、レーベル側に搾取されつづけるロックスターの悲劇です。


キンクスは実際「ユー・リアリー・ガット・ミー」「サニーアフターヌーン」「ウォータールー・サンセット」といった英チャートNO.1に輝いたヒット曲を連発していたにもかかわらず、アルバムの製作はいつも低予算で、しかも新しいアイディアをピート・タウンゼントに盗まれるという不運もついてまわり、これの前作「アーサー」がレイにとって不完全燃焼な結果になってしまうなど(楽曲は良いけど)、なかなか報われないバンドでした。
アメリカ進出が上手くいかないことは、彼の作風がよりイギリス的な方向へ向かう結果になり、「サムシング・エルス」「ヴィレッジグリーン・プリザベイション・ソサイエティ」といったアルバムは、かなりそれが出色となっています。


今作は「LOLA」「Get Back In The Line」「Apeman」のような中期キンクス的なポップソングに加え、「The Contenders」「Powerman」、それからデイブ・デイヴィス作の「Rats」といったアメリカ的な土臭いフィーリングを持った曲が増えているのが特徴です。

この物語のラストは、音楽活動と事務所とのゴタゴタを全て投げ出して、逃亡のすえ辿り着いたカントリーサイドで一時の安らぎをえた主人公が、新たに生きる希望を見出していくという「自由に向かって」でクロージングとなります。
それはまるでレイ本人のようでもあるし、ポール・マッカートニーやアンディ・パートリッジなんかともダブりますね。

そして次作のアルバム「マスウェル・ヒルビリーズ」は、なかなかどうして全編アメリカンなスワンプ/ブルース/ハードロックで通した内容で、キンクスは見事に英国のファンを置いてけぼりにしたのでした。